中南米の大自然と遺跡の数々。
9ヶ月に及ぶ縦断の記録です。             
第15話 ナスカに到着!!!                               


<<ナスカに到着!!!>>

 ナスカの20km程手前に砂漠の中に立つ「ミラドール」と呼ばれる観察やぐらがあった。昔、地上絵の研究家であるマリア・ライヘという女性が建てたもので、これに登るとすぐ目の前に地上絵が見られるというので早速、登ってみた。10mくらいの高さから下を見下ろすと、地面に何かが書いてあるようだった。ガイドブックと照らし合わせると、どうも、「手」と「木」のようで、かなりはっきりと分かった。そのやぐらから降り、さらにナスカの方に近づくと「ミラドール・ナチュラル」というのがあり、こちらは自然に出来た丘で、その上からも地上絵を見ることが出来た。こっちからはいくつにも延びる放射状の線だった。このどこまでも延びつづける線は53本もあるらしく、はっきりと見て分かった。地上絵のイメージはコンドルに代表されているが、実際はいろいろなものがあり、動植物の描かれた物は30個くらいで、不可解な線になると200本近くあるらしい。
 地表絵が何を表しているのかは今だ謎で、いろいろな説がある。ミラドールを建ててまで研究したマリア・ライヘさんは地上絵はナスカ人のカレンダーだったと説いている。それにしても地上から見たら、地上絵は何かで書かれているのではなく、ただ地表部分の黒い小石をどけて白い地肌を出している、といった具合に描かれてある単純なもので、まさかそれが何かを表している線だというのは解らないから、本当に不思議だ。

 とりあえず、無事ナスカの町につき、とうとうやって来たという感動に浸りながら、ホテルを探していると、早速、客引きが次から次とやってきた。値段を聞き、部屋をチェックし、すぐに落ち着くことが出来た。こういう町は完全にお客側が有利で交渉が楽だった。明日にでも地上絵をみるセスナツアーに出かけようと思い、ホテルの受付でいくらで乗れるか聞くと、US$50だという。ガイドブックにもその値段で書いてあったし、どうも、セスナツアーは割引ができないツアーだというのが法律で決まっているらしかった。ただ、実は昨日のミラドールの下でツアー斡旋のおっちゃんがいて「法律では、US$50だけど、俺はセスナを持っていて、良かったらUS$30で乗せてやるぞ!」と、言われていたので、そのことを言うと、相手はしばらく考え、「分かった!US$30で良い!ただし、他の客には言うなよ!」と、いうので交渉が成立した。ペルーの平均的なサラリーマンの収入が日本円で¥20000くらいと考えると、ツアー代金は割りの良い収入で、多少やばくてもみんな法律を犯すのだろう。ナスカを訪れた観光客のほぼ全員がフライトすると思うと、すごい金額が動いている と思うのだが、ナスカの町が特別に裕福な町には思えなかった。

<<ナスカ・フライト>>

 昼過ぎには風で砂漠の砂が舞い上がるというので、早朝から出発した。ホテルの前にはちゃんとお出迎えの車が来ていて、向こうもなれた具合に話し掛けてきた。「エノ・アトハ・・、インカノハカニイキマショ!インカノハカ!」などと、言ってくる。多くの観光地でそんな輩がいたけど、ここナスカが一番多くいて、また日本語も上手かった。
 いよいよ、フライト。長年の夢が叶う瞬間だ!今回の旅で一つ一つ確実に夢が叶っていく。たぶん、人よりも多くの夢を見て、それらをどうしても実現したいという、貪欲さが夢の実現につながっているんだと思う。やっぱり、夢が叶うっていうのは良い!
 朝食は軽くサンドイッチにコーヒーだけにしておいた。本当は何も食べないでおこうと思ったんだが、さすがに空腹には勝てなかった。フライト経験者が言うには、かなり揺れて、胃にあるものは全て出してしまうらしい。人一倍車酔いの激しかったので、どうしたものかと考えたが、結局、ビニール袋持参という対策しか思いつかなかった。
 ほんまにこんな飛行機が飛ぶんか?という具合の飛行機だった。操縦士を入れて4人乗りでフアッと機体が浮いたかと思うと、既に離陸して次第に高度が上がっていった。飛行機には慣れていたけど、初めてちょっと恐怖を覚えた。順調にセスナは地上絵の方へと飛んで行った。操縦士が何かを言っているがプロペラがうるさく、何も聞こえなかった。もちろん、スペイン語の理解不足もあるけど・・・。どうやら、地上絵の上空に来ているらしかった。ここまではなんとか酔わずに来れたので、このままセスナ遊覧が楽しめると思ったその瞬間にグラッと機体が傾き始めた。もうそうなると、今まで我慢してきた物がどんどんと出てきた。隣にいた外国人も袋を用意していて、二人揃って座席にうずくまってしまった。それでも、ここまで来たのに無残に酔ってばかりではいられなかったので、体勢を立て直し、何枚か写真を撮ることに成功した。操縦士が「右の窓から見えるぞ!」と言ったかと思うと、「よし、次は右からだ!」と言って、大きく機体が傾いた。操縦士はそんなことを何回か繰り返し、サービス精神旺盛にガイドをしてくれた。心の中では「もう良いから、水平に飛んでくれ!」と、叫び ながらも、地上絵を見ながら、感動していた。

そして、あんなに地上絵に憧れてここまで来たにも関わらず、地上絵よりも感動したことは、どこまでもどこまでも広がるナスカパンパの大地に、地球が丸く見える辺りから続いているたった一本の道、パンアメリカンハイウェー。そう、昨日走ってきた道が見えたときは、よくこんなとこ走ってきたなあ、と自分の軌跡を見て涙が止まらなかった。

―今、俺は地球の上を走っているんだ!―

( 第16話へ続く

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