中南米の大自然と遺跡の数々。
9ヶ月に及ぶ縦断の記録です。


第8話『ティカル遺跡』


 

<<ジャングルの中の神殿『ティカル遺跡』>> 


 ベリーズから中米二番目の国、ガテマラに入国。
この国に来た目的は、もちろんマヤ遺跡最大級の遺跡、『ティカル遺跡』だ。今後、ルート上にマヤ文明の遺跡はないので、一応、今回が最後のマヤ遺跡の訪問となる。そう思うと、何故か気合いが入る。
 遺跡見学に行く前夜、ホテルのすぐ近くのレストランで夕食を食べていると、
「明朝、4:00に遺跡に向かうバスがあるが、行かないか?」と、誘われた。
「何故、そんな早い時間なんだ?」
「ジャングルにそびえ立つ神殿のてっぺんから、朝日を拝むんだ。」と、いう贅沢なものだった。
「Si.(オッケー!!!)」

 明朝4:00。辺りは真っ暗で、星がまだ輝いている。普段、朝は強くないのだけど、今日だけは違った。
緑の地平線、ジャングルから昇る朝日とは、どんなものだろうか?と、大きな期待と共にバスに乗り込んだ。 
すでに、マイクロバスにはその贅沢な朝日を見ようという輩が10人以上もいた。暗闇の中、バスはかなりのスピードを出し、走った。この辺りの道は悪路で有名なのだが、さすが、世界中から観光客が集まるだけあって、ちゃんと舗装されていて、心地よく眠れた。

 遺跡の入り口には、マイクロバスが何台も止まっていて、既に人々の影はなかった。すぐ目の前にいたツアーには、ちゃんとガイドがいて、やみくもに朝日を拝めるポイントを探すよりは、そのガイドをあてにしたほうがいいと思ったので、少し離れてこっそりと、その集団について行った。
 暗闇の中、どこからともなく猿の鳴き声が聞こえてくる。それが妙に不気味で、今、ジャングルのどまん中にいるんだ、という緊張が、ひしひしと感じられた。すぐ目の前に何かが飛び出してきたとしても、そう不思議ではなかった。
うっすらと明るくなってきた頃、遺跡で一番高いピラミッド(4号神殿)に着いた。

 [早く登らないと、朝日が出てしまう。]と、思い、急いで登った。
途中までは山道や、崖にはしごがかかったりと、朝一番にするような運動ではなかったが、すべてはその贅沢な計画のためだと思い、頑張った。
 神殿のてっぺんに近ずくにつれ、重大な事に気付いた。というのは、目の前に広がっているはずの緑の地平線はなく、あるのは真っ白な世界、つまり辺り一面、霧に覆われていた世界だった。もしかしたら日の出までには霧が晴れるかも知れないとひそかに期待はしていたが、霧は晴れなかった。
すでに、明るくなっていて、その何も見えないピラミッドのてっぺんで少し休み、そして、腹も減ってきたので、入り口近くにあるレストランまで朝食を食べに行った。

 幸いにも、朝食を食べ終える頃には、霧も晴れていて、気を取り直し遺跡めぐりに没頭した。他の遺跡とは異なり、ピラミッドを結ぶ道の上には木々が生い茂り、直射日光をさえぎり、ひんやりとし、いつも汗だくになるはずの遺跡めぐりなのだが、今回はそんなこともなく十分に、時間をかけることができた。
せっかくの朝日は拝めなかったが、ジャングルにそびえ立つ神殿からのながめが、もうそんなことは忘れさせてくれていた。  



<<ガテマラシティーのセントロ(中心街)>>


 ガテマラシティーで泊まったホテルで、他の客に言われた最初の言葉は
「おまえは何を売っているんだい?」
「エッ?! 何を?」
「だから、何を売ってるんだ?」
「ノー、何も売ってない。俺は日本人旅行者だ。」
「あー、そうか。すまなかったな。」
と、いうものだった。後で知ったことだが、どうもその宿は物売りの宿だったらしい。そういえばガテマラシティーの町中には路上での物売りが多く、衣類をはじめ、ラジオや車のアンテナ、鍋などの台所用品、電池、靴下、洗濯ばさみや歯みがき粉、などなど。
彼等の多くが本当にそれだけで生計を立てているのかと疑いたくなる。そんなものばかりだ。

そんなものでも、売り手の人々たちを見ていると、せっぱ詰まったものが感じらる。大声を張り上げ、その日、その日の収入がそのまま生活につながっているのだ。彼等の目には、大金を払い、外国旅行をしている僕等の存在は、どのように写っているんいるんだろうか?
ガテマラシティーのセントロでは『貧困』という、今の日本ではなかなかお目にかかれない現実に出会った気がする。
 そんななかで、民芸品は格好の収入源らしく、特にガテマラの織物は『ガテマラレインボー』と言われる程で、世界的に有名なためか、おみやげ屋に並ぶ品々はこの国の物価水準を考えると、かなり高い気がした。

 今、いるホテルはガイドブックによると、ガテマラでも1、2を争う危険な地区にいるとのことだが、街のどまん中にあり、一泊260円くらいという安さなので他の宿へ移る気にはなれなかった。
部屋は値段相応に悪く、窓もなく裸電球が一つぶら下がっていて、薄暗く、じめじめとしていて、牢獄とはこんな感じなんだろうなあと、思った。
 この地区がヤバイというのは町中を歩いていてすぐに思った。町中のほとんどの商店には、銃を抱えたガードマンがいて、それは別に銀行や宝石店に限ったことではなく、小さな食堂にもいた。



情報によると、この国に来る少し前に、全体的な物価が1.5倍くらいに上昇し、国民が騒いでいるとのことだった。そんな中でおもしろかったのは、銃をもったガードマンもマクドナルドの入り口に立てば、お客の出入りに合わせて、ドアの開閉を担当するドアマンを演ずる姿だった。
 マクドナルドといえば、ガテマラシティーに来て初めて食べに行ったとき、すぐ近くにいた女子高生らしき4人組みが、ちらちらとこっちを見ていた。何だろうと思いながらも、あまり気にせずにいた。しばらくすると、彼女たちのうち二人がやってきて、「これ、あの子から。」と、言って、アイスクリームを差し出された。そのころ、まだスペイン語をあまり話せなかったので、ありがとう、としか言えず、どうしようか?と考えていると、微笑みながら彼女たちはそのまま、去って行った。あの、アイスクリームはなんだったんだろうか?その後、何度かそのマクドナルドに行ったが、彼女たちとは会うことはなかった。

 この国の物価を考えると、マクドナルドとはお金持ちの食べ物なんだと思うけど、そんなところに高校生が出入りしているのを見て、ますます、ガテマラという国の貧富の差を見せつけられた思いがした。


<<南米へのチケット探し>>  


ここ、ガテマラから南米『コロンビア』に飛行機で行くことにした。理由としてはいろいろあったが、中米は既に雨期に入ったというのと、時間的余裕がないというのが、主な理由だった。
市内の旅行代理店を尋ね回ったが、正規料金のチケットしかなく、挙句の果て、バスで小一時間くらいのところにある『アンティグア』という町まで探しに行った。この町は安全で気候も良く、多くの日本人旅行者がスペイン語を学ぶのに滞在するところでもある。
なんと、ここでは学割で25%オフになるチケットを扱っている代理店を見つけることができ、さっそく、購入した。
 いよいよ、南米だ。
 ガテマラは、深刻な政情不安や、人種差別を抱えているというが、やはり、旅行者、それも短期では、なかなか深いところまではわからなかった。
ただ、どんな小さな子供でも一生懸命に働いていて、でも、その横には裕福そうな子供もいる。かなりの貧富の差のある国だと思った。

第9話へ続く

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