中南米の大自然と遺跡の数々。
9ヶ月に及ぶ縦断の記録です。
第33話 <<ひたすら東へ・・・>>                               


<<ひたすら東へ・・・>>

 無事、ブエノスアイレス発クアラルンプール行きのMH784便は飛び立ちここから20時間ほどの空の旅が始まった。途中、南アフリカ共和国のケープタウン、ヨハネスブルクにトランジットするのは嬉しい。ただのトランジットだけど、憧れの大地に降立つことができるのはほんとに嬉しい限りだ。

 夕食の機内食をおかわりしたがまだ腹は膨れない。そんな気持ちが伝わったのか隣のおばさんがデザートのプリンをくれ、ありがたく戴いた。食後に音楽でも聴こうかとヘッドホンを差し込むと、なんと日本の歌だ。前にこの席に座ったのも日本人かもしれない。しばらく聞いているとなぜか無性に涙が出てきて止まらなかった。いよいよ日本に帰るからだろうか?なぜかは解らなかった。

 これから20時間後にはクアラに着き、そこからまた2時間ほどでバンコクだ。ほんとに日本はすぐ目の前だ。
 夜中の2時半頃に目が覚め、窓を開けると雲平線から朝日が昇る直前だった。何とも神秘的な瞬間で、機内は灯も消え静まりかえり、聞こえるのは寝息のような静かなエンジン音。すぐに機内灯がつき明るくなったと思うと、日の出だ。この座席に位置からでは完全には見えなかったが、少し見えたのでつい写真を撮ってしまった。

 やっと夢にまで見たアフリカの大地に立つことが出来た.と言ってもただのトランジットなので全然大したことではなかったが、やっぱり嬉しい。「いつか、もう一度、来てやる!」と誓った。
 アフリカからの飛行機には多くの日本人が乗っていて、どこかのツアー客だけでも20人くらいで、それ以外にもちらほらと日本人を見かけることが出来、いつもと違ったフインキだった。また、ひたすら東に向かって飛んでいるのでどんどんと時間を飛び越しているような不思議な空間にいて、時間の感覚ももうみちゃくちゃだった。

 マダガスカル島の上空を越え、眼下にはインド洋が広がっている。初めて見たインド洋、と言っても飛行機からなのでほんとはどうか解らないけどきれいな青だった。着々と子供の頃から抱き続けた夢が叶っていっているのを実感しながら、インド洋を眺めていた。夢を叶えられる人って言うのはほんとに少ない気がし、そう考えると自分の境遇がいかに恵まれているのかと言うのが解る。ほんとに幸せ者で、これからも自分の夢などやりたいことを実現するまで、多くの嫌なことがあると思うが、何事も大事の前の小事と信じ、頑張って乗り越えていこう、と考えているといつの間にか眠っていた・・・。

 長旅の末、とうとうクアラルンプールまで来た。この空港には以前にも来たことがあったので懐かしく、この空港ではシャワーが使えることも知っている。早速、シャワーを浴び、体がサラサラとしていて気持ちが良く、髪の毛なんかはこの9ヶ月の間伸ばしたい放題だったので特に気持ちがよかった。
 バンコクまで2時間の旅だけど、ここ1日半の間ほとんどまともに寝ていないので、いつ離陸したのかも分からない。時間感覚が狂い、とにかく今はひたすら眠い・・・。

 バンコク空港に着陸するとき、まだ着陸もしていないのでもちろん飛行機の扉が開いていないにも関わらず、あの懐かしいタイ独特の臭いを感じた。飛行機の都合上ここに1泊しないといけない。ちょうど1時間の差で乗り継ぎが上手くいかないということらしい。こちらとしては懐かしのタイで1泊出来るので嬉しかったので問題はなく、今晩は市内の安宿にでも泊まろうと早速市内に行こうと思い、外へ出た。自動ドアの扉が開き足を一歩踏み出すともうそれ以上前には進めずすぐに空港内に引き返した。どうも空港内は完全冷房のようで、扉越しには判らなかったが外は暑く、ムッとした熱気に包まれていた。懐かしの街へと行くつもりだったがそんな気は一気に失せてしまい、もうどうでもよくなった。このまま空港で一晩過ごそう!そうすれば汗もかかないしシャワーも浴びる必要もなく、宿に泊まる必要もない。おまけに明日の出発が朝の9時だったので、バンコクの渋滞はひどいので有名なので飛行機に乗り遅れるかもしれない、と、次から次へと空港から出ないで良いような理由が浮かんでくる。今までパタゴニアのような場所にいたので気候的に正反対のバンコクでは外に出るのが嫌になる のも無理はないな、と自分で納得していた。

 もう市内に行かないと決めたら直ぐに空港内のレストランに入った。懐かしのタイの飯を食いたかったが、あの辛いタイの飯ではなく、観光客用に味を調えた物だった。まあ空港っていうところはそんなものなのかなーと少々残念な気もし、おまけに値段もべらぼうに高かく、ここで払ったのは160B(バーツ)。街で食べると30Bもしないものだが、US$1が25Bなのでさすがに空港ではUS$1の飯は出せないのだろうと納得した。
 空港内には日本人がやたらと目立つ。今までもそうだがなぜか日本人っていうのはどこに行っても草履を履く。もちろんここでいう日本人っていうのは貧乏旅行者のことだけど。そして半ズボン。一応空港というのはお金持ちの人たちが利用する場所でどこの空港に行ってもみんなそこそこの格好をしている。でも、日本人だけは大抵旅をしているときのそのままの格好なので直ぐに目立ってしまう。まあ、それだけ日本人にとって飛行機という乗り物に対して特別な意識を持っていない証なんだと思うけど。あと、ちょっとびっくりしたのはバンコクの空港のファーストフードで注文を頼んでいると、直ぐ横のカウンターで同じように注文していた女の子たちがいたが、どうも言葉が通じなくて困っているようだったので、話しかけてみた。その女の子たちによると「注文の仕方が解らないんです。」と言うので、「欲しいセットの番号を言うだけですよ。英語も通じますし。」と言うと、「はい、そうなんですけど、その英語が分からないんです。」ちょっとびっくりしたけど代わりに注文してあげることにした。「イクス・キューズ・ミ。テゥー・セッツ・オブ・ナンバーシックス。プリーズ。」と言う と、カウンターのお兄さんが「OK! Thank you!」と言いながら笑顔で答えてくれた。その日本人の女の子たちにもお礼を言われたが、いくら英語が話せなくても1〜10程度の数字くらいは勉強してきたら良いんじゃないかなーと感じた。聞けばタイに二人で2週間ほどいたそうで、よく無事に日本に帰れるなーと、ある意味感心してしまった。
 
 <<日本・・・>>

 今、日本へ向かうDC−10に中にいる。9ヶ月もの旅が今終わろうとしている。不思議と静かすぎる程落ち着いていて、前回の旅ではかなりこみ上げてくるものがあったのだが今回はほとんどない。30時間ものフライトに疲れてしまっているからだろうか?もしくはもうこんな事には何も感じなくなってしまったのだろうか?旅の途中ではめちゃくちゃ熱く普段の生活ではどこか冷めてしまっているところがあるけど、もう旅は終わってしまっているのだろうか?この先、何も新鮮なことは無いというのが気持ちを冷ましてしまっているのだろうか?
 今回TG728(タイ航空728便)で帰国中だが、これが何とJALとの共同運行便でJALに乗っているような気分で、乗客のほとんどが日本人で、大阪に向かっている割りに乗客はみんな静かだ。前回の旅では旅の余韻に浸るはずだった機内の中で大阪のおばちゃんたちの話し声にムードを掻き消されたので今回はちょっと嬉しい。ただ、大阪のおばちゃんたちにムードを壊されることはなかったが、横に座ったおっちゃんには幻滅させられた。
 日本へ向けての最後のフライトの離陸後しばらくして隣に座っていたおっちゃん曰く
「タイへはお一人で?」
「ええ」と答えた。
「昨日はバンコクに泊まったの?」
「いえ、空港です」
「ふーん、そう。で、どうだった?タイは?タイに一人で行くって事はやっぱりあれでしょう?十分楽しんだ?」
最初はこのおっちゃんが何を言いたかったのは解らなかったが、直ぐにハッとして何を言いたいのかが解った。
「私ははよく仕事で中国や東南アジアに行くんだけどタイが一番良いね!みんな若いし。お兄さんなんか若いしかなり楽しめたんじゃないの?」
とかなんとか言いながら、タイでの話をし始めたので、
「すみません、僕はバンコクにはトランジットで立ち寄っただけで、空港から出てません。南米から来たんです。」
その後、今までしてきた旅の話をし、相手が思っているような事をしてきたんじゃないと強く言い張った。それにしてもタイへ一人で行く男がみんな売春などの目的で行っていると思われているのは以外だった。いろいろと話をしているうちにそのおじさんには家族もいて、年頃の娘さんもいて、エンジニアとして諸外国へよく行っていて、行く度に現地で遊んでくると言うことが解った。日本の大人ってそんなものなのかと幻滅させられ、ああいう大人だけにはなりたくないなーと心の中で強く思った。結局そのおっちゃんはこちらがあんまり話に乗ってこないとみてか、ウイスキーを飲んで寝静まり、ようやく今までの旅のことを振り返ることが出来た。

 今回の帰国ルートはかなり良いルートで、アフリカ大陸にも降り立ち、懐かしのクアラやバンコクにも立ち寄れたし、そして最後はいつかは乗ってみたかったJALの国際線で日本へ。やはりサービスも良く、何よりもスチュワーデスが日本語っていうのはありがたい。

 日本に着いたら、当分スペイン語を使えなくなるのが残念だ。まあ、多くのアミーゴに手紙でも出そう!!!

第34話へ続く

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