中南米の大自然と遺跡の数々。
9ヶ月に及ぶ縦断の記録です。
第27話 アルゼンチンでの不思議な出会い・・・
<<アルゼンチンでの不思議な出会い・・・>>
今日は一日休みの日だ。ここ数日予定通りの80km/日以上のペースで走っていてパタゴニアの悪路と強風を考えるとまずまずだと思う。カラファテの町までたった168kmしか無いけど、このキャンプ場はHotシャワー、使いたい放題の水、それでもタダなのでもうそれだけでかなり気に入った。こんなところは滅多に無く、一泊で立ち去るのは勿体無かったしもう一泊したわけで、あとここではガソリンも手に入り思いっきり使え、食料も自由に買えたのでふだん節約を強いられている分、ほんと天国のような町だった。
2月11日カラファテの町に着いた。パタゴニアの中でもここはかなり大きな町で、パタゴニアという独特の土地柄のせいもあって世界中の観光客が訪れるのは決まってこのカラファテが多い。この町から西へ90km程行った所にペリト・モレノ氷河という巨大な氷河があり、パタゴニアを訪れた人の殆どが一回は見に行くという。
その氷河はカラファテから西にあるので帰りは追い風で良いが行きは真っ向からの向かい風と闘わないといけないので、町田さんと話していてそれは避けたいということのなり、かと言ってバスツアーでは氷河の入場料なんかも含めるとUS$30(US$1=¥110−)くらいと高く、とてもじゃないけど払うのが勿体無かったので、悩んだ挙句にヒッチハイクで行こうということになった。ここに来るまで南米の人々にはかなりお世話になっていて、また南米の人々の優しさを当てにしていたこともあって簡単だろうと思っていたのだったがそれは全く甘えた考えだったと思い知らされることになった。右手の親指だけを立てて道行く運転手に合図を送るのだが誰も反応してくれず1時間程も過ぎていた。もしかして今日中に行けないのでは?という不安を頭に浮かべながら、なぜ誰も停まってくれないのかを考えてみた。南米の人でも観光客は不親切なのか、それとも氷河を見に行く金をケチるような奴は見に行かんでもええ!と思ってるのか、もしくは格好がみすぼらしかった為かと理由はいくらでも考えることがで来たがとにかく誰も停まってくれはしなかった。そうこうしているうちにやっと一
台の車が停まってくれ、なんとか車に乗り込むことがで来た。日本のハイエースのような車だったが椅子が6つしかなく後部は荷物置きになっているなか、なんとか我々2人を座らせようとスペースを空けてくれた。
やはり車は速く、ここ最近ずーっと自転車のスピードに慣れていたので妙に新鮮に思え、車での移動も良いな、なんてのんきなことを考えていた。狭い車内で町田さんと2人で日本語で喋ってると運転をしているどうやらその家族のパパらしき人が聞き耳を立ててその会話を聞いているように思えて仕方がなかったが、まさか日本語が解るわけ無いのに気のせいだろうと思っていた。もしかしてということもあり、彼らの気に障るようなことは一切言わずにむしろほんとに良い人に出会えたなあ、と繰り返し言うようにした。誉め言葉を言う度に嬉しそうな顔をしていたのでほんまに解ってるんちゃうか?と町田さんに小さな声で話しかけてみたりもしたが、実際彼に話しかけるのはスペイン語で、返事もスペイン語で返ってくる。相手がもし日本語を喋れるのならこちらが日本人というのがわかっている以上日本語で喋ってくるだろうし、なんとなく変な感じだった。
彼らはブエノスアイレスから家族旅行で来ていてカラファテに着くなり、サンドイッチはどうだ?と、コーラと一緒に差し出してくれ、「帰りはどうする?もし良かったら乗っていくか?」とほんとに優しくしてもらった。
帰りもカラファテの町まで乗せて行ってもらい、別れ際に「Muchas grasias!(本当にありがとうございました)」というと、「どういたしまして!」という返事に二人して驚き、「なんで日本語知ってるんですか?」と聞くと「3世」ということで、おじいさんが沖縄出身で日本語は大体解るということだった。「なんでもっと早く言ってくれなかったんですか?」と言うと、気恥ずかしそうに笑っているだけだった。行くときにあれだけ多くの車が通り過ぎて行ったのに、何故この車だけが停まってくれたのかが判った気がして心がすっきりとし今まで気になっていたことも解決した。たとえ生まれた場所や住んでいるところが違っても同じ日本人という昔からの血縁は拭い消し去ることもできず、同じ日本人ということで親切にしてくれたあの親子、日本の真裏のアルゼンチンにまで来てほんとに素敵な日本人に出会えたのはなんとも言えないくらい嬉しかった。
<<カラファテ−ペリト・モレロ氷河−>>
カラファテの氷河は噂以上に素晴らしく、何が素晴らしいかと言うと何よりもまず、その神秘的な存在だろう。
とにかく青く、それも今までに見てきた空の青、カリブ海の青、チチカカ湖の青、あちこちにあった湖の青、それら全てとはまた違った青色だった。氷河から何か目に見えない神秘的なオーラのような光線が放たれていて、それがそこにいる人々全てを魅了し、ひとときの間異空間へと誘い込んでいる様にも思えた。
写真で見ていたものとは比べ物にはならないくらい素敵な青で、ただ氷河を見に来るだけ、その為にだけでも地球の裏側にまで来た価値はあり、氷河は見た目は小さく見えるがほんとはかなり大きく、その証拠に目の前の氷河からほんの小さなかけらが落ちたかと思った途端に凄まじい音と水しぶきを立てている。横にいたツアーのガイドの話を盗み聞きするとすぐ目の前の氷河でも60メートル以上もあるからさらに驚きだ。こんなに素晴らしい氷河を見に行くのにちょっとしたバス代をケチっていた自分自身の姿が情けなく思ったのと同時に、一万年以上も経ってもそのままの姿でいる氷河の前では
人間の歴史や存在なんてものはほんの小さな出来事の一つに過ぎないんだなあと考えさせられた・・・。
( 第28話へ続く )
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