平成11年3月 隊集会

春の山菜採取ハイクのはずが…


平成11年3月21日(日)
今回は、高槻市方面において、「山菜を採取しながら、追跡記号と方位を使って
且つ、行程を野帳に記録しつつハイクを行う」を目的にしたハイキングを企画した。
昼食は、採取した山菜で天ぷらで舌鼓を打つ予定だ。


 

当日、朝は曇り空、次第に雨に変わる天気で、2月に続いて今回も雨である。
朝8時にJR岸辺駅に集合。
コブラ班、フクロウ班とも、班長が体調をくずしたり、用事等で欠席である。
JRで高槻まで移動する。いつもは、各人に切符を手渡すのであるが、
今回始めて、現金で一人1000円与えて、おつりを後で回収する方式にした。
自分で切符を購入、現金の管理をしてもらうというのが、ねらいであるが、
これが、後々、重要な意味を持つ事になるとは、その時誰も思いもしなかった。


高槻に着いて、しばらくすると雨が降りはじめた。
春のうららかな山菜摘みをイメージしていたのだが、思うように採取できそうにない。
カッパを着用すればいいのに、スカウトは、防寒用の上着のみである。
耐水性はそれほどないのに、風邪ひいてしまうぞ!


五万分の1の地図を片手に、目的地の座標を指示する。
地形図は、班集会でも練習したし、昨年「明日香村」ハイクの際に経験済みだ。
「座標105090を経由して、座標115109を目指してハイクを行う。
途中、追跡サインに注意して、道を間違えないように。行程は全て野帳形式で記録する事」
隊長から、指示が出る。



この時、フクロウ班は致命的間違いをおかす。
座標115109を座標151109と聞き違えてしまった。
出発点から見ると、90度方向が違う。
また、経由点を経て目的地に向かうという事も失念している。


追跡記号は、先発した隊長が設置してまわる。
一方、さらに先発していた副長補2名が、目的地から約1.5キロ南に、
鍋一杯に「トン汁」を作って待っている。
雪まじりの雨の中、山菜摘みは事実上、断念せざるを得ない。
寒さも手伝って、とてもそんな気分になれない。


15分の時間差を置いて、フクロウ班から出発。
結局は、この15分で、フクロウ班は行方不明となる。
しかし、誰もそんなことは想像していなかった。
続いて、コブラ班出発。
少し距離を持って、リーダーが続く。
すると、いきなりコブラ班は道を間違えた。
たまらずリーダーが声をかける。
「地図をもう一回確認しろ!」


手渡した地図には、経由点と目的地の地名はわざと消してある。
経由点は「本山寺」、目的地は「ポンポン山山頂」だ。
二つとも一般的ハイキングコースなので、道々に道標が出ている。
「本山寺まで1.5km」…「ポンポン山、こっち」…
地名がわかってしまうと、道標だけで行けてしまうので、あえて消したのだ。
が、効果があり過ぎたか。
行き先を示す座標と地名が一致していないので
スカウトは、道が正しいのか、また、到着したのか、の確信が持てないようだ。
地図をもっと良く見ると、得られる情報はあるのだが…・


経由点の「本山寺」には、フクロウ班到着未確認。
コブラ班は何とか到着。目的地を目指す。
ここまでは、野帳も書けていたようだ。
目的地付近になって、コブラ班は追跡サインを見落とし、コースを外れてしまった。
リーダーは、すぐ見落としに気づき、コースを戻り、サイン発見。
何とか、目的地である「ポンポン山山頂」に到着した。
予定より1時間遅れとなっていた。


昼食場所で待機していた隊長は、いつまで待っても到着しない2班を心配しだす。
雪まじりの冷たい雨が、容赦無くほほを打つ。
リーダーは、手分けして捜索に入った。
1km四方ほどの地域をくまなく、道なきところも分け入って捜索を続ける。
疲れはでない。あせりがよぎる。
途中、自分の場所を見失いそうになり、自らサインを置きながらの捜索である。

フクロウ班、コブラ班、両班とも、行方不明。
最悪の事態となった。

と、その時、今まで電波状態不良で沈黙していた携帯電話がコールした。
はたして、フクロウ班次長からの電話だった。
彼は、自分たちの事を言う前に、本体の事を気遣っている。
隊長としては、フクロウ班の現在地、班員の状態をまず先に確認したいのだが、
電波状態が非常に微弱で、途切れ途切れの通話状態だ。
再度コール。そんなやり取りが何度も続く。
話の要約はこうだ。
フクロウ班は、座標151109に向かって、歩を進めていったが、サインが途切れ
それでも、次のサインを求めてそのまま続行したが、
いよいよ、山深くなり、コースを外れた事に気づいた。
その時は、相当な距離を歩いていたので、また、小学生スカウトもいることから、
引き返すことは困難と判断。
地図を検討の末、町まで続くバス幹線道路を目指し、長岡天神駅まで来た。
というものだった。

恐らく、彼らにとって、決められたプログラムを自らの判断で離脱するのは
始めてのことだっただろう。また、その判断は結果的に正しかった。
雪まじりの雨の中、体力がどんどん失われていく状態で、戻っていたら、
本体に合流するまでに、ほんとに遭難したかもしれない。
隊長は、そのままJR岸辺まで自力で帰るように指示。
ここで、出掛けに切符ではなく、現金で渡したことが効を奏した。

コブラ班は、依然行方不明のままだ。
その後も、捜索を続けたが、発見することができない。
隊長は、とりあえず撤収を決意し、「神峰山寺」まで戻ることにした。
鍋一杯のトン汁がむなしい。捨てるには惜しいのでビニール袋に入れて下山することにした。



出発地点の「神峰山寺」に到着。
と、そこに、コブラ班とリーダーの姿が見えた。
再会をはたした瞬間だ。
とにかく、ほっと力が抜ける。
その時になって、体が震え出す。
何度、崖を越え、道無き道を行き来したことか。
その時になって、始めて疲労を感じることが出来た。

何か温かいものでも…、そう「トン汁」がある。
副長補は、トン汁を取り出した。
ビニール袋から出てきた、丁度人肌ぐらいにぬるくなった「トン汁」を見て
スカウトは、ぽつりと一言いった。
「ゲロや」


予定のプログラムを半分しか出来なかった。またしても「野外料理章」失敗である。
野草料理は2団にむかないのか。
予定時間をオーバーしての岸辺駅到着。
そこに、フクロウ班が待っていた。
ずぶぬれになっているのだから、家にすぐ帰ればいいのに待っていてくれた。
2時間待っていたそうである。

結果的には、課題の多く残る行事であった。
いまここで、ひとつひとつ述べることはしないが、
偶然では済まされない人災的要素もある。
これからの活動に貴重な経験となることは間違いない。
今回は、非常にラッキーだったのだ。
いつも、ラッキーが続くとは限らない。

そして、スカウトには、きっと強烈な印象を残したことだろう。
長く記憶にとどまるに違いない。


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